観劇にっき「カメヤ演芸場物語」(長文)

劇団イナダ組「カメヤ演芸場物語」
札幌・道新ホール
観劇日:11月19日
 札幌での観劇は去年のイナダ組「ライナス」、TEAM-NACS「LOOSER」に続いて3回目。道新ホールは北海道新聞社のビルの上にあってかなり古ぼけた劇場ですが、客席数は700席と札幌では歴史と風格のあるホールなんじゃないかしら。
入り口はちゃちく、ロビーは狭く、観劇前は大変過ごしづらいホールでもあります。
 席は前から5列目の右端。道新ホールはステージが高いため、あまり前だと見づらい。それにセットが立体的に作り込まれてる(中央が演芸場楽屋、上手に道路がある)せいで、下手の役者さんの動きが見えない時もありました。
前説は小山めぐみさん。「LOVER」で大泉さんの恋人役を演じてたSKGの女優。テレビ北海道の開局記念ドキュメンタリー番組に先日出演したそうな。声が良く通るし表情がステキなので、中央でもやってけるんじゃないかな。汚れ役(新感線的な)を見てみたい。
舞台は昭和46年の浅草。Jくん扮する金朝師匠が舞台背景について口上を述べる所からスタート。
演芸場は森崎リーダー扮する2代目が父から引き継いで運営してるんだけど、どうも勝手が分からない。古株の事務員や従業員、出前のおばちゃんにまで小バカにされる始末だ。リーダーはこういう情けない役が似合う。NACSの時はテンション一辺倒の芝居をしてるので飽きがきてしまうんだけど、イナダの時は緩急あわせもった役を与えてもらってる気がする。
 夏目の妹は学生運動に傾倒しており、彼女の友人・秋田(音尾先生)と共に夏目に運動参加を呼びかける。ある日、アジトが公安に踏み込まれて各自散り散りになる。秋田が偶然逃げ込んだ場所がカメヤ演芸場。酒浸りの夫婦漫才のダンナ・ロマン師匠(大泉さん)が秋田を助けて演芸場で手当をする。夏目も楽屋にいて、秋田を二人はかくまうことに。しかし他の従業員たちに見つかってしまう。素性を隠すためにとっさに出た言葉が「俺の新しい相方です!(夏目)」。秋田も口裏をあわせて、いきなりの漫才コンビが誕生。
従業員の夏目役・飯野さん。初めて彼の芝居を見たけど、澄んだ目の役者さんというのが第一印象。彼も器用になんでもこなせそう。妹を気遣う兄の目、相方を得た喜びをかみしめる若手芸人の目、同僚を厳しく見つめる目。口調も柔らかいけど、とにかく目がステキだった。
音尾先生の秋田は偶然知り合った演芸場の人達のことを知るうちに、自分たちが今までやってきたことに疑問を抱きはじめる。学生運動と芸人という全く違ったベクトルながら、同じ街で一生懸命暮らす人々。どちらが世のためになっているのか? 人を笑わせる芸人に何の興味がなかったのに、憧れや畏敬の念を持ち始める秋田。芝居が進むウチに秋田の表情が柔和になっていく演技は、やっぱり音尾先生じゃないとできない。前回は思春期の娘を持つ父親役。「LOOSER」では沖田総司役。キャパシティが広い人だよ、ホント。
一方の大泉さんのロマン師匠。この人もキワモノが似合うね。「女にだらしない」という裏設定がかいま見れなかったのは残念だけど、酒を飲む姿はかなりハマってた。奥さんのカレン(棚田さん)が病気に倒れてしまった時とか、ちょっとホロリとする演技をしてた。
トリオ漫才の3人。岩尾さん・小島さん・江田さん。それぞれのキャラクターが出てて良かったんだけど、リーダー石崎役の岩尾さんが今回の大ヒット。集団就職で出てきて工員から芸人になり、一旗あげるために一生懸命ネタを作っている石崎。でも相方のクニはネタを覚えないし、ちー子はクニをかばってばかり。負けん気が強くてロマン師匠とも口論が絶えない。ある日、クニがネタを忘れて舞台を降りてしまう。怒った石崎に「たかが漫才だろ」とクニ。石崎は石崎なりに、このトリオを成功させたくて一生懸命やってきたのに相方から言われた酷い一言。あんなに尖ってた石崎の切っ先がポッキリ折れてしまった瞬間。ヤなヤツだけど、この瞬間はホント悲しかったし、彼の気持ちに感情移入してしまった。
結局石崎はトリオを解散して演芸場から姿を消してしまうんだけど、その時にやったギターの弾き語りが切なくてねぇ。あの曲だけシングルで聞かせて欲しいわ。
カレンの病状は悪化するばかり。ある日カレンはちー子に2代目カレンになってくれるよう頼む。ちー子は大役を断ろうとするが、石崎の出て行った意味を想い、継ぐことを決意する。
ロマン・カレンの襲名披露の日。公安にばれてしまった秋田は、最後の漫才を終える間際に舞台から逃走。2代目と夏目が逃走の手はずを極秘に整えていたのだった。
そして2代目ロマン・カレンの襲名披露が始まる直前、カレンが楽屋で息絶える。カレンの最後の想いに応えるため、ロマンは舞台に立つ。
 カレンの病状が悪化する辺りから、泣きの芝居一辺倒になるかと思いきや、そこはイナダさんの好演出。ありきたりな泣かせ方はさせず、あくまでホロッと自然に涙を流せる話のもってきかたをしてくれたので、すごく後味スッキリ。涙のあとに笑いあり、まさに素敵なショービジネスの世界な感じ。
泣きのシーンというのは、わざとらしくしちゃいかんのです。
「こんな場面で泣かされちまったよ! 泣いた自分がちょっと恥ずかしい!」
って思う時ってありますでしょ? ガマ王子とザリガニ魔人がそうでしたよ。「まんまと手法にのせられる」感じ。
それがイナダさんの芝居にはない。自然と涙が出ちゃうけど号泣って訳じゃない。さじ加減が絶妙なんです。
 とにかく、すごく「良い芝居を見た」気分にさせてくれました。去年に引き続き、イナダ組の芝居はベスト3に入る名作かと思われます。DVDが出るみたいなので、非常に楽しみ。
終わった後に飲んだ酒がうまかったにゃー。
Posted: Mon - November 29, 2004 at 09:43 pm
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